オプション取引について
(以前の記事、先物についてはこちら
http://koniken.hatenablog.jp/entry/2018/10/13/044438 )
オプションも先物と同じように
指数などを商品として、一定期間内においてX円で買い(売り)ますという形になります。
しかし先物と大きく違うのが上記の売買ができるという"権利"を売買している点です。
それがどう違うかというと、先物の場合一定期間内(またはSQ日)に反対売買にてイグジットしなければいけないのに比べて
オプション保有者(ロング側)の場合、権利放棄ができるので必ずしも反対売買により決済しないといけないという訳ではありません。つまり、期限まで予想を外れた値動きをして損失を被る場合には権利放棄をして損失回避が可能ということになります。
●一定期間後に指数商品をX円で買える権利をコール
●一定期間後に指数商品をX円で売れる権利をプット
と呼び、プット・コールともにロング(買い)・ショート(売り)どちらからでもエントリーが可能なので
コールロング
コールショート
プットロング
プットショート
の4パターンでのエントリーが可能ということになります。
ロングポジションでは権利放棄による損失回避ができるので新規建て時に払うP円以外損失はありませんが、ショートポジションの場合ロング側の権利行使に従わないといけないため無限損失の可能性があります。なのでこちらは先物とおなじくマネーショートリスクがあるため証拠金(または追証)が必要になります。
厳密にオプション取引を文章化するなら
『金融指数などを商品として、一定期間経過後において権利行使価格X円で買う(売る)ことができる権利をオプションプレミアムP円で買い(売り)ます。』
という風になります。
SQ到達時点においての着地損益グラフはこうなります。
(SQ到達前でのイグジットは後程説明します。)
コール
コールロングホルダーの場合はエントリー時にコールショート側の投資家にオプションプレミアムP円を払って権利を取得。
イグジット時点で原資産価格SQがX円を上回っていた(SQ>X)場合は権利を行使し差金決済による価格差利益を獲得できます。
式でいえば
(SQ-X-P)×取引単位×オプション枚数
逆にSQ<Xだった場合には権利を放棄し差損益は0
最終的にはグラフ斜線部の損失額を回避したことでプレミアム分が損失になります。
P×取引単位×オプション枚数=損失
コールショートホルダーの場合にはエントリー時にコールロング側から受け取ったプレミアムP円が利益となり代わりに権利を譲渡。
イグジット時点で原資産SQ>Xだった場合
コールロング側は権利を行使して利益とりにいきます。ショート側は権利を譲渡しているのでそれに応じなければならないためロング側の利益分と同等の損失を被ります。
式でいえば
(X-SQ+P)×取引単位×オプション枚数
逆にSQ<Xなら
ロング側は権利を放棄しますのでショート側に実際でていたはずの利益は0になります。
最終的にはエントリー時受け取ったプレミアム分が利益になります。
プット
プットロングもコールロングと同じくプレミアムを支払ってエントリー、権利行使パターンがSQ<X、放棄がSQ>Xに逆さまになっただけです。式においてもXとSQの位置を入れ換えて計算し、放棄時はプレミアム分が損失となります。
プットショートも同様にロング側の権利行使時にはプットロングの利益額と同等の損失、放棄時にはプレミアム分の利益を得ます。
コールプットどちらのケースでもいえるのは
ロングホルダー対ショートホルダーのゼロサムゲームになる。
ショートは利益上限がプレミアム額なので利益幅がロングより激しく限定されている。
なので、ロングが権利を持っていることでSQ到達時点ではかなり不利な取引が行われることになる。
ってことですかね。
次にオプション取引を構成する各要素を1つずつ説明していきます。
対象商品は基本的に先物のように日経平均やTOPIXなどの金融指数などと優良個別銘柄などもオプション取引ができるようになってます。
一定期間というのは先物のように限月が設定されておますが先物と違い毎月限月として設定されていますので各エントリーから最長で八年先までの期間内月刻みでの権利売買が可能です。
期間が満期まで達した場合、つまりは限月第2金曜日になったときには先物と同じくSQ値において利益がでるなら決済がされ損失を被るなら権利放棄がされます。
指数を売買できる価格X円のことを権利行使価格といいます。先物価格は自動的に算定されてたのに比べてこのXの数値は新規建ての段階で設定でき、原資産の現在価格から250円刻みで上下16段階ずつまでのレンジで自由に設定できます。
つまり、
原資産価格-250×16≦X≦原資産価格+250×16
という式になります。
満期が残り3ヶ月まで迫っている場合には上の式の250が125に変わります。
権利行使にあたって、一定期間内ならいつでも権利行使できるというアメリカンスタイルと一定期間経過後(SQ日)にのみ権利行使できるヨーロピアンスタイルの二種類に分けられています。
アメリカンスタイルは流動的なかわりに比較的割高になる傾向がありますが、基本的に日経やTOPIXオプションはヨーロピアンなのでSQまで権利行使は出来ません。
SQ前にイグジットしたい場合はプレミアム(P)差益のみを目的とした転売もしくは買い戻しによる反対売買になります。
式で表すと
ロングは{(イグジットP)-(エントリーP)}×単位×枚数=損益
ショートは{(エントリーP)-(イグジットP)}×単位×枚数=損益
というならばコール(もしくはプット)オプションプレミアムという個別銘柄の買いエントリーか空売りエントリーによるトレードという形になります。
権利の価格Pのことをオプションプレミアムといいます。オプションプレミアムの変動要因は主に5つ
●原資産価格
●権利行使価格
●短期金利
●満期(SQ日)までの残り期間の長さ
により影響します。
オプションプレミアムは原資産価格を原点とした権利行使価格の絶対値である本質価値に金利、ボラティリティ、残り期間から加味される時間価値を足し合わせて決定します。
仮に本質価値を下回ったプレミアムで取引がされていた場合には
本質価値-プレミアム=利益となりノータイムでキャピタルゲインを得られることになるのでプレミアムは本質価値以上になります。
例えば、原資産の現在価値150円の株式を将来100円のコールオプションがプレミアム40円で取引されてるとします。そのコールを買うのと同時にその株式を空売りしていた場合のキャッシュフローは
150【空売りによる現金収入】-40【プレミアム代金】=+110円
になります。そして将来100円で買うためにこのキャッシュから100万を預金した時のキャッシュフローは
110-100(預け入れによる支出)
=+10円
この取引による現時点での利益はノータイムで+10円になりました。
そしてオプション期間が満期まで到達したときの株式価格が権利行使価格100円を下回って80円になっていた場合
空売りをイグジット、権利放棄を行うことで
-80【売建買い戻し決済】+0【権利放棄】+100(1+金利←1%と仮定)【預金による金利収入】
=+21円
エントリー時の利益と合わせて+31円になります。
逆に株式価格が権利行使価格を上回り120円になっていた場合は
空売りをイグジット、権利行使を行うことで
-120【売建買い戻し決済】+120-100【権利行使】+100(1+金利←1%と仮定)【預金による金利収入】
=+1円
エントリー時の利益と合わせて+11円になります。
つまりプレミアム<本質価値の場合には
元手もなしで全くリスクを負うことなく利益を得られる。そして賢い投資家がこのチャンスを見逃すはずはありません。
割高な株価への空売り集中、割安なコールプレミアムへの買い集中で価格調整されていくという流れになるのでプレミアムは本質価値を下回らないわけです。
短期金利についてです
金利が上昇したと仮定しましょう。
そうなると現時点での運用益が増えるということになるので権利行使価格でコールするために必要な現時点元手資金が金利上昇分少なくて済むようになることによりコールロング需要が増える。ということでコールオプションのプレミアムは上がります。
逆にプットオプションの場合は将来プット権行使により受け取ることができる現金を現在価値に割り引くと金利上昇分だけ割安になってしまうのでプットロング需要が減る。ということでプットオプションのプレミアムは下がります。
金利下落の場合にはこれと逆のことがいえるでしょう。
ボラティリティについてです。
ボラティリティは確率変数における株価の平均期待値(トレンド)からの標準偏差(平均からのばらつきの幅)のことでして、この確率分布の特性を利用したチャート指標がボリンジャーバンドです。
チャート指標~ボリンジャーバンド~ - こにけんの投資備忘録
ざっくりいうと値動きが乱高下している銘柄ほどボラは高いよってことで、ボリバンの帯幅が広ければ広いほどボラティリティが高いということになります。
通常、ボラティリティはリターン幅とリスク幅が比例して拡がるのですが
オプションロングの場合、プットコールともに権利放棄による損失回避が可能なのでこの乱高下しているリターン幅だけ恩恵を受けられる強みがあります。
期待リターンが上がるということは需要も増えるので
プットコールどちらのオプションも需要増加によるプレミアム価格上昇が考えられます。
残り期間の長さについてです。
リスクオフレートにおいては時間をかければかけるほど運用利益は膨らむと考えられます。
例えば、銀行預金に2年預けるか8年預けるかのどちらが利息を多くもらえるかといえばわかりやすいと思いますが、期間の長さは金利による影響とよく似た傾向があります。
なので金利効果的な面ではコール側は期間が長いほど需要増、プットは需要減によるプレミアム変動が起こると考えられます。
しかし、期間の長さは他にもボラティリティに影響を与えます。
1日の値動きより1年の値動きの方が幅は明らかに大きいですよね。なので、期間の長さはボラティリティ的な面ではプットコールどちらとも需要増が見込めるということになります。
総合的に考えると期間の長さによるプレミアム変動は
コールの場合は需要増によるプレミアム上昇
プットの場合は金利的な面での下落要因、ボラ的な面での上昇要因を包括的に加味した変動を見せる
と考えられますね。
オプションを利用した投資戦略
●ターゲットセリング(上昇予想ヘッジ)
オプション対応個別銘柄(株式など現物があるもの)を現物とコールショートで持ち行使価格Xを現物で売り抜けたいと考えている価格に設定する。
SQ到達時
SQ>Xなら
コールロング側は権利行使する。それに対して現物を受け渡し(現渡しによる決済)、代金X円を受け取ることで売りたいと計画していた価格Xで現物をイグジットできたことになる。SQ-X分の値上がり益は得られないが代わりにプラスでオプションプレミアム分の利益が上乗せされる計算になる。
SQ<Xなら(おもったほど上がらなかった場合)
コールロング側は権利放棄する。なのでオプションは無効となりこちらには期間内に思ったほど上がらなかったが少しは上がっている現物とオプションプレミアムの受け取り益が残る。
●プロテクティブプット(下落予想ヘッジ)
先物による下落ヘッジと同じようにプットロングによる空売り相殺を狙う方法。先物との違いは先物ショート後、予想に反して価格が上昇した際に生じる先物損失と現物上昇による利益が相殺される可能性をプット権利による損失回避機能で無くしてことです。仮に値が上がってしまった場合には権利放棄をしてプットオプションを無効にすれば現物上昇益だけ恩恵を受けられます。
しかし、この方法ほ問題点がありまして
現在価値に付随して自動的に決まっている先物とは違って自分で設定するXを見誤ってしまった場合にヘッジがうまく機能しない点と
下落局面のヘッジ需要増加によりプットプレミアムが割高になる可能性がある点です。
なので先物による売りヘッジ枚数を市場動向に合わせて随時調節することでヘッジ圧を変えて同様の機能を持たせるダイナミックヘッジなどもあるみたいです。
●ロングストラドル(ボラティリティ上昇予想)
同じ原資産のオプションをコールロング、プットロングでなおかつ同じX(現在価格に近い値に合わせて設定)でポジションを持つことで画像点線のようなグラフが形成され、二つを合成した結果的なポジショングラフが実線になります。
つまり、ボラティリティが激しくなり現在価格(≒X)から大きく乖離すると予想できるが上昇か下落か方向性が掴めていない場合にはこのポジションをつくり上昇下落を予測できずとも値幅変化での利益をとろうという戦略です。
●ショートストラドル(ボラティリティ下落予想)
反対にボラティリティが下落し現在価格からSQまでの間に動かなそうと予想した場合にはプットショート、コールショートポジションを合成してショートストラドルを作ります。
こうすることで値動きが微弱なもので(コール+プットの)合成プレミアム価格を上回らなかった場合には利益がでます。
しかしながらショートストラドルはグラフをみてもわかるように損失リスクが非常に大きいため注意が必要です。